2008年3月2日日曜日

石炭100ドルの衝撃(日経新聞より)

久しぶりに日本の記事を見て驚愕。エネルギー高騰の流れを更に飛び越えて石炭が値上がりしているようです。マクロ経済を習っている中でインフレ抑制に苦心する各国の政策がモデルとして出てきましたが、この価格高騰は原油並にインパクトがありそうです。加えてこの値上がりが示唆する需給バランスは計り知れず、どれだけ日本の需要家、それから同僚達が苦労しているかと思うとため息が出ます・・・。

以下は日経新聞Websiteからの引用です。

石炭100ドルの衝撃(上)新興国の需要広がる――中国など輸出抑制相次ぐ。

 石炭の高騰が止まらない。アジア市場で発電用石炭(一般炭)のスポット価格は一月半ばに初めて一トン一〇〇ドルの大台を突破した。新興国の「爆食」の広がりが価格を新次元に押し上げた。上昇率はニューヨーク市場で一バレル一〇〇ドルを超えた原油をしのぐ。世界最大の石炭輸入国である日本への衝撃は大きい。




 一〇〇ドル、一三〇ドル、一五〇ドル。オーストラリア産一般炭のスポット価格は青天井の上昇が続く。一年前は五〇ドル台、五年前は二〇ドル台だった。鋼材に使う石炭(原料炭)の高騰はさらに激しく、最近では三〇〇ドルのスポット取引も現れた。 年産約二十五億トンと世界最大の生産量を誇る中国の輸出減少が大きい。同国の貿易統計によると二〇〇七年の輸出量は約五千三百万トンと四年間で四割強減った。国内で石炭火力発電所や製鉄所が続々と建ち、石炭消費が拡大しているためだ。



 昨年後半には国際価格の上昇をみた鉱山会社が輸出を増やす動きもあった。国内向けの供給が減ったうえ、大雪による輸送の混乱も重なり、中国の電力会社の石炭在庫は瞬く間に底をつく。 電力不足を懸念した中国政府は一月下旬の通達で、石炭の輸出抑制という強硬手段を打ち出した。二月の春節(旧正月)と三月の全国人民代表大会の期間中、石炭輸出を制限する内容だった。 日本の電力会社など需要家は共同出資会社の石炭資源開発を通じ、中国の鉱山会社から〇七年度約四百四十万トンを購入する予定だった。だが二月になって中国からの輸出が激減した。需要家は「二―三月の契約分は本当に供給されるのか」(セメント会社)と不安を強める。



 中国は膨張する内需を賄うため、ベトナムやインドネシアから安い石炭の輸入を増やしてきた。〇七年の輸入量は五千百万トンと四年前の四・七倍。今年にも純輸入国に転じる公算が大きい。 ところが、そのベトナムは石炭輸出を大幅に減らす方針を決めた。国内で石炭火力発電所の建設が進むほか、セメント需要が旺盛だからだ。日本にとって主要な一般炭の供給源であるインドネシアも輸出を削減する。日本や中国、インドなどの需要をだれが賄うのか不透明になっている。



 一般炭は熱量当たりのコストが石油の三分の一とも四分の一とも言われる。天然ガスに比べても安い。燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量が多く環境負荷は大きいが、新興国の経済成長に不可欠な資源だ。 原料炭も代替品はなく、価格が三ケタに切り上がっても争奪戦の熱は冷めない。 「新興国の景気がよほど悪化しない限り、今後三年間は売り手市場が続く」(商社)との見方が現実味を帯び始めている。


[2月26日/日本経済新聞 朝刊]





石炭100ドルの衝撃(下)コスト高の連鎖鮮明に――電力料金など上昇圧力。


 発電用石炭(一般炭)はスポット価格に続き、年間の長期契約価格も一トン一〇〇ドルを超えるとの予想が多い。日本の電力会社はもともとスポット市場での調達は少ない。長期契約価格が大台に乗る衝撃は、スポット価格が一〇〇ドルに達したことの比ではない。 一部の国内電力会社はオーストラリア産で、二〇〇八年度の契約価格を一二五ドルに引き上げる要請を受け始めたようだ。五五―五六ドルだった〇七年度の二倍近い。 



 資源枯渇リスクが低い割安なエネルギー源として重宝されてきたのが一般炭。火力発電燃料に使う原油の輸入価格は過去最高を更新し、天然ガスも上昇している。一般炭が四月から値上がりすれば電力料金の上昇圧力が強まるのは確実だ。 東京電力の柏崎刈羽原子力発電所停止などで日本の電力会社は原発の稼働率低下を余儀なくされている。電力の安定供給へ、一般炭が高騰しても石炭火力発電はフル操業を続けざるを得ない。 



 影響は電力料金にとどまらない。太平洋セメントなどセメント大手は四月からの製品値上げを決めた。燃料用に購入する中国産やロシア産の一般炭も〇八年度は大幅高が確実で、これを先取りした動きだ。 プラチナやアルミニウムが一月から急騰した裏にも石炭が絡んでいる。プラチナでは主産国の南アフリカ共和国が大雨、アルミでは主産国の中国が大雪に見舞われ、石炭の生産や輸送が滞った。両国の製錬所では電力不足が深刻になり、プラチナの国際価格は年初比四割弱、アルミは二割弱跳ね上がった。



 鉄鋼用石炭(原料炭)の上昇は鋼材値上げに追い打ちをかける。国内鋼材大手は鉄鉱石の高騰を理由に卸向けの薄鋼板価格を約三割引き上げる交渉をしている。原料炭の交渉次第では「追加値上げをしなければならない」(新日本製鉄)。 鋼材の値上がりは炭鉱で使うトラックや油圧ショベルなどの価格に跳ね返る。「人件費や燃料費を含め、炭鉱会社のコストは急上昇している」(資源調査会社のコーリンク=東京・港)。石炭高騰が巡り巡って石炭の生産コストを押し上げる高値の連鎖だ。



 物流コストも押し上げられる。豪の石炭積み出し拠点であるニューカッスル港では石炭輸送のため世界中からばら積み船が押し寄せ、接岸できない船が沖合で入港を待つ「滞船」が日常茶飯事だ。輸送遅れによる炭鉱会社の損失は一日数万ドルに及び、石炭価格に転嫁される。 同港の能力を拡張する計画はあるものの、完成予定は一〇年。その先には炭鉱から港までの鉄道能力の拡充という次のボトルネックが立ちはだかる。 原油の一バレル一〇〇ドル突破は世界経済の波乱要因として認識された。石炭でも価格高騰が日本や新興国に及ぼすインパクトは無視できない。石炭の一〇〇ドル乗せを重大なインフレリスクの台頭と受け止める必要がある。


[2月27日/日本経済新聞 朝刊]

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

御無沙汰!

ネゴシーズンであり、あまり詳しく書く訳にはいかないけど、御既承の通り原料炭のスポット価格はUS$300台に突入。去年の今頃、誰が予想し得ただろうか。。

っていうか、もう少し勉強しろよ。笑

mick さんのコメント...

お、久しぶり。もう誰も予想出来ないよね、こうなっちゃうと・・・高値だからプロジェクトに突っ込んでたら勝ちかっていうとそうでもないし、しんどいですな。

勉強は勿論やってますよん。あまりブログに書いてないだけで・・・笑 今週は試験でバタバタしとります。

匿名 さんのコメント...

おー、頑張ってくれ!