2008年1月30日水曜日

Winter授業紹介(3)GEM

今回はGEM(Global Economics for Managers)を紹介します。これはいわゆるマクロ経済の授業なのですが、Free Tradeがどのように恩恵をもたらすか、通貨の役割と為替レートの決定要因、政府の金融政策・財政政策と経済の関係等さまざまな側面からグローバル経済のダイナミズムを学んでいきます。一見ビジネスと関係なさそうに見えて、企業活動がもたらす影響に就いて大きな視野を学ぶことができます。

教授はセクションによって異なりますが、当方が習っている教授は
Prof. Slaugterです。彼はホワイトハウスでアドバイザリーを務めたこともある、この世界では相当名の知れた人物で、2005年からTuckで教えています。今でもワシントンにはちょくちょく足を運んでおり、先日は第一回米中経済会議(とかなんとか)に参加したり、電話でFRBのChairmanと話したりしている為、授業で話すエピソードも臨場感にあふれています。先日日本のゼロ金利に就いて質問をしたところ、「ちょうど昨日日銀のFukuiさんと話ししたけど、彼も結構悩んでいるようだった」と言われ、びびりました。。


授業は毎回数十ページのリーディングを前提に、コールドコールを挟みながらコンセプトの説明が進められます。説明は早口ですが非常にロジカルで、どうやったらこんなスピードで正確且つロジカルに話せるのか、と毎回驚かされています。

この授業ではシンプルなモデルが幾度も登場します。例えばFree Tradeの説明では、世界に一つしか国がなく生産しているモノはシャツとワインのみ、というところから入ります。

(こんな感じ)




この例では供給曲線と需要曲線(Indifference Curve)の接するAが最適な生産ポートフォリオとなります。BやCでは供給価格と需要価格にギャップがあり、供給の少ない製品は利益を求めて生産量を増やすので自然とAにシフトします。これに貿易を加えると、相手国が全く同じ生産・需要構造を持っていない限り、貿易によってより高いWelfareが得られるので、Free Tradeは経済理論上良い効果をもたらす、というのが結論になります。


また、最近の金融政策の授業では「ベビーシッターCo-op」という例が出されました。地元Hanoverでベビーシッターをしたい/求める人達がお互いにベビーシッティングする組合を作り、一回Sitする毎にアイスの棒一本を相手に渡し、その棒はまたSitしてほしい時に使うことが出来ます。ここで産み出されるGDPはSitの回数、通貨はアイスの棒、Sitの価格はアイスの棒1本分です。では、クリスマスを前に何が起こるかというと、皆クリスマスに備えてアイスの棒をキープしたがります。するとSitの供給は増えるものの、需要は極端に減ってしまい、トータルのSit数=GDPが下がる。これが不況です。不況に対応する為には、アイスの棒を一時的に増やすことで皆がクリスマスに想定する需要を満たせるようにする。そうすると皆クリスマスを気にせずアイスの棒を使えるので、クリスマス前の需要が伸びます。ではそのままでいいかというと、クリスマスが終わってしまえば需要は元に戻るので、今度はアイスの棒がたくさんあるので皆Sitをしなくてもよくなります。(アイスの棒を使えば自分達の需要は満たされる)今度は供給が落ち込み、需要が満たされなくなるので再び不況に陥ります。よって需要期が終わり次第、アイスの棒を市場から回収しなくてはなりません。


少々長くなりましたが、このような説明の中で教授が常に強調するのは「Build your intuition」というフレーズです。教授は「一つ一つの図や数式を暗記する必要はない、理屈を理解して直感を育てることが近い将来Managerになる君達にとって必要なことだ」と力強く語ってくれます。きっとこの授業を受けていてよかったな、と思うのは少々先になってからになるのでしょう。来週はCase write-upもあり大変になりそうですが、Intuitionを身につけるべく、くらいついていこうと思います。

0 件のコメント: